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自給率が向上したきのこ-食料の安全保障に関連して-

ここのところ、農産物・食料品の輸入あるいは食料の安全保障に関する議論がかまびすしい…

ある人は「自給率が低下するからTPPやFTAなどの輸入自由化には反対だ」と言い、またある人は「生産規模を拡大すれば大丈夫だ」と言うのだが…

いずれも、日本の農業は現在のところ外国よりも弱く、それゆえこのままでは貿易の自由化で国内農業が衰退し、食料自給率が低下する、という見方では一致しているように思われます。

私もそうした意見に真っ向から反対するつもりはないです。

しかし、国産農産物がことごとく、現状のままでは外国産に負けてしまうかのように言われると、決して首肯することはできない!実はこれまで国内での生産量が着実に増加し、21世紀に入ってからは自給率が増加した農産物が存在するのであります。

それは「きのこ」です。

周知のように、きのこの中の中心品目である”生しいたけ”は、2001年に日本政府が発動した暫定セーフガードの対象品目の一つでありました。要するに、輸入量が短期間に驚くほど増加した品目であります。どれほど増えたかというと、1990年まではせいぜい1,000㌧程度にとどまっていた輸入量が、2000年には何と40倍以上の40,000㌧超に達しました。

この結果、確かにしいたけの国内生産量は減少しましたが、生しいたけの輸入が急増し、国内生産量が減少した時でさえ、きのこ全体の生産量は増加傾向を保ち続けていました。

そして、21世紀に入り、しいたけの国内生産量が下げ止まり傾向を帯びるようになると、自給率は明らかな上昇傾向に転じました。きのこの国内生産量が増加し続け、21世紀に自給率が上昇に転じた要因は、決して少なくはないであろうが、筆者が主因と考えるものの一つは、国産きのこの種類の多様化(多品目化)であります。

かつては「きのこ=しいたけ」と言っても過言ではなかったものの、今ではそう捉える人はほとんどいないほど種類が増えました。すなわち、消費者にとって「選ぶ喜び」・「食べる楽しさ」が増したのであります。

もうひとつの主因は、新たに普及した品目のほとんどで、価格がしいたけを下回っていることであります。驚くことに、”えのきだけ”や”なめこ”などのように、1㎏当たり単価がしいたけの3分の1程度にすぎないものさえあります。

消費者にとってきのこは買いやすい商品になったのであります。

こうしたきのこの動向とその要因は、今後の日本農業のあり方を考える上で、ひいては食料の安全保障を考える上で、重要な示唆を与えているように思えてならないのです。

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