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食料輸入が増加したのはなぜ?-食料の安全保障に関連して-

今では「日本は昔から食料輸入大国であった」と思い込んでいる人が少なくないと思います。確かに小麦や大豆等の一部の品目では、第2次大戦後まもなくして大量の輸入が行われました。

しかし、多くの品目で輸入が顕著に増え始めたのは1980年代中ごろ、今から30年ほど前です。

例えば、時々マスコミで取り上げられる野菜の輸入動向をみると、1984年までは年間輸入量は常に100万㌧以下にすぎなかったものの、その後急速に増え始め、1990年末以降は毎年400万㌧前後に達しているほどです。

では、なぜ1980年代中ごろから多様な品目の輸入量が大幅に増え始めたのか?

よく言われるように「食の洋風化」が原因なのでしょうか…確かに小麦の輸入量が増えたのはパン食という「食の洋風化」が主因の一つであったことは間違いないでしょう。

しかし、「食の洋風化」は第2次大戦後ほどなくして始まっていることから、これを1980年代中ごろ以降の輸入急増の主因とするには無理があります。

となると、主因は何であろうか!?

やはり、その一つは1985年9月のG5のプラザ合意を契機とした円高でしょう。どれほどの円高であったかというと、プラザ合意前の為替の交換レートは1ドルが240円ほどであったのに対し、1995年4月19日には一時的ではあったものの1ドルが79円75銭になったのです。

現在では1ドルが79円、80円だと言われても誰も驚くことはないのですが、当時はわずか10年間に240円から80円へと、信じがたいほど大きく変わったのであります。ごく単純に考えれば、1985年には1ドルの物を輸入するのに240円払わなければならなかったが、10年後の95年4月19日には同じ物を80円で輸入できるようになったのであります。

こうした輸入品価格の大幅な下落が輸入の急増を引き起こしたのであります。

ちなみに、多くの品目で1985年から95年にかけて輸入量が急増しましたが、それはまさに円高が最も急速に進行した時期でもあります。

[図:生鮮野菜の輸入量と国産野菜の収穫量・出荷量の推移]

出所:「野菜生産出荷統計」、農畜産業振興機構資料、旧野菜供給安定基金資料

注:輸入量は暦年、収穫量・出荷量は生産年度(野菜品目の多くは4月~翌年3月)

 

もうひとつの主因は、農水産物生産者の高齢化等による国内農水産物生産力の低下です。

図2に生鮮野菜の輸入量の変化と、国内野菜生産力(収穫量と出荷量)の年々の変化を示しましたが、これから読み取れるように生鮮野菜の輸入量が毎年20万㌧を超えるようになるのは、プラザ合意の1985年よりも3年ほど遅れた88年からでありましたが、その年から国内の生産力も明らかな低下傾向に陥ったのです。

しかも、その後も輸入量が一時的に減少する時には、国内生産力は一時的であれ持ち直しているのであります。なお、2001年の暫定セーフガードの対象品目となった「白ネギ」の輸入が増え始めたのは1998年からですが、この年は冷夏と秋台風によって国内産地が大ダメージを受け、「白ネギ」の収穫量と出荷量が急減した年でもありました。

もちろん、これらの要因だけでなく、1980年代におけるリーファー・コンテナ(温度調整ができる海上コンテナ)やジャンボジェット機の普及といった輸送手段の発達も重視しなければならないですね。

しかし、いずれにしても、日本はもともと食料輸入大国であったわけではないし、また輸入増大の主因が「食の洋風化」だけであったわけでもないのです。

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