1. HOME
  2. ブログ
  3. 農業
  4. JGAP認証取得を経営改善ツールに?社員のモチベーション、バイヤーの信頼アップ

BLOG

ブログ

農業

JGAP認証取得を経営改善ツールに?社員のモチベーション、バイヤーの信頼アップ

【前回までの決定事項】

① 松田農場のキンカンをPB商品として扱う
② 今期は九州で試験販売をして来期に本格勝負

今回は、JGAPの取組みから取得までを簡単に説明し、それが契約にどう関連づいたか説明します。まずは、JGAP に取り組んだ理由ですが、某スーパーの要望はグローバルGAPの準拠が必要条件でした。簡単に言うと世界基準に準じて欲しいという事です。

しかし、グローバルGAPの『準拠』と『取得』の違いは認証費用ぐらいで、このケースで認証取得するのは費用効果を考えるとメリットが薄いと判断しました。また、準拠だけでは他の販売先へのアピール度が低いと考えましたし、独力でグローバルGAPのマニュアルや規定を作成するには時間が足りないと考えました。

そこで、どうせ取り組むならJGAP認証を目指し

①同様の取組みで
②導入支援を受け易く
③企業評価も上がり
④時間やコストを削減
⑤PR効果も上げられる

と考えて、松田農場に提案して同意を得ました。そして、仲買にグローバルGAP準拠に不足分は追加対応する事で了解を得ました。JGAPの詳細につきましては別の機会にお話し出来たらと思っていますが、私は『一言で言うと農業版ISO』 と話してイメージしてもらっています。

*JGAPとは、Japan Good Agricultural Practiceの略称です。

それでは、認証取得までの簡単な流れを実際の写真を添えて説明します。

(1)事前審査

任意の審査ですが、本審査をスムーズに行う為に取り組んでいます。

①書類審査

JGAPに求められる項目の現状チェック、 指導員によるヒアリング。およそ半日

②現場審査

農場や薬品の管理状態を把握。およそ半日。

(2)マニュアル・規定書の作成

事前審査の不備を修正しルール作り。今回はPB化の都合上、JGAP指導員とバイヤーを交えたマニュアル作成会議を実施。一般的な農家は暦や手帳に作業記録を取っていますが、改めて作業マニュアル・規定書・帳票を作成。

(*)ここからが本格始動

(3)運用開始

2で作成したルールに則って運用。 松田農場では朝礼での指導のほかに、マニュアルや注意事項を掲示板に貼って社員に周知徹底。この考え方は建設現場の運用を応用しており、品質向上の他、社員の安全や作業の効率化に。

(4)本審査

①書類審査

②現場審査

JGAPの審査員が審査に来て、事前審査と同じ内容の審査。運用開始からの記録を確実にとっておき審査員の質問に答える。普段の通りで良いのですが、スムーズな進行の為に農場の整理整頓をしておいた方が良いでしょう。不適合の指摘を受けた場合、理由を確認し是正措置を検討します。この審査は終日。

(5)是正措置

審査の際に不備を指摘されましたら、速やかに是正。松田農場は、危険箇所の手すり設置等軽微な物3点で即日修了。

(6)認証取得

是正処置の報告を済ませ、およそ一か月後にJGAP認証農場の証明書が発行。松田農場の場合、認証取得を目指してから取得までおよそ6ヶ月、費用は20万円弱で、ハード面の主な出費は、選果場の改善。一般的には6〜12ヶ月程度かかると予想されるので、スケージュールは余裕を持っていた方が良い。

(*)協力企業:南興商事(株)による導入指導

【実際に取得したことによって変わった事】

①従業員の意識
②家族的経営から企業的経営へ
③信用の向上

バイヤーの評価例をあげると、当初キンカンに全く関心無く『キンカンは売れませんよ』と言っていたバイヤーが、農場に着いた途端目の色変えて視察して『買いたい!』『野間口さん、私が手を挙げたのを忘れないでください』と言って帰りました。これは収穫前でサンプルが無く、農場視察のみで取引の申し出を受けた異例のケースでした。

松田農場が成功した理由と致しまして、私はこのように考えています。

①   松田社長の経営マインドが高い

建設業からの異業種参入でISOを経験していたので取組みがスムーズであり、かつ、売上・経費・作業効率の目標を掲げて数値化しています。また、販売活動を強化しました。

②   JGAP認証取得の目的は経営改革

大手スーパーのPB化の手段としながらも、販売や経営改善の為のツールと位置づけて社員に指導。これによって、全員のモチベーションが高まり意欲的に作業し、それによって外部の評価も高まって、ますます従業員の満足度や意欲が高まる好循環を生み出しています。

③   食の安全・安心は当たり前という意識

JGAPが特別な事ではなく、美味しいキンカンを作るのは勿論『食の安心と安全を考えると当たり前の事をしただけ』という思想が、バイヤーや消費者を引きつけて販路拡大や受注増に繋がりました。この結果、予定を半月程前倒しして完売しています。

更に、狙った訳ではありませんが日本初のキンカン認証農場という事も地元紙に大きく報じられて知名度を上げる事に成功しました。この機会に、スーパーへのPR活動を強化しました。この様に良い事ばかりをあげましたが、全ての企業が好転する訳ではありません。そこで、上手く行かない企業の特徴をあげますと、

①   認証取得が目的となっている

仕方なく運用している・大手小売店の要望でさせられていると考えているので従業員の士気が低く、結果的にバイヤーの評価も高くありません。本来、バイヤーとは自社製品の販売パートナーとして一緒に取り組むべきところが、厳しい条件を押付けて来たと考えて対立感覚になっています。

②   JGAPを取ったのだから高値販売は当然

気持ちは分かりますが、バイヤーや大手小売店は食品偽装や残留農薬問題などの危機感の高まりを受けて、管理意識が非常高くなっており当たり前の事を要望していると感じます。むしろ、JGAPを価格交渉の材料にされるとバイヤーは嫌気がさして離れて行くような気がします。私的な意見ですが店舗の棚・加工工場の原料供給枠を取る際の競合他社との差別化材料にした方が前向きと考えます。

(*)経営者は常に他社との競合を意識して危機感を持つべきであると考えています。

さて、ここまで順調に進むと仲卸も本気でスーパーとの交渉に入ります。前回のおさらいになりますが、仲卸は地方に埋もれている良いものを探しています。そしてスーパーは、安全安心で良い商品を売りたいのです。ですから、自ずと仲卸もスーパーも熱が入ってきます。ここから、販売計画と生産計画のすり合わせに入ります。

まずは生産側の確認

①販売期間:松田農場のキンカンの出荷期間は、12月中旬から3月上旬まで。
②生産量:全生産量はおよそ**t。(企業秘密)
③販売荷姿:ガセット・袋・パック・箱詰めなど
④希望卸価格:***円

次にスーパーが

①   規格・仕様
②   量

を提示し価格交渉に入ります。この時点で年末のギフトに出してみたいと嬉しい追加申し込みがありました。ただし、カタログ作成には間に合わないので、店頭展示販売です。

この時は収穫前で実物が無く、箱詰めや袋詰めをした時の大きさや雰囲気を予想しながら進めます。袋に入れた時の雰囲気を確認しています。

検討内容

①   価格設定とボリューム感のバランスが良いか
②   店頭陳列時に映えるか

を中心に考え、いくつかのパターンを試して決定します。

【JGAPと契約に関する今回のまとめ】

①   経営改善ツールにして、社員の満足度やモチベーションアップに繋げると効果的です。
②   企業の評価・信頼もアップします。
③   バイヤーを巻き込んで認証取得すると製販一体感が強まり効果的です。

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事